町長の部屋
令和7年度施政方針
本日、ここに、白鷹町議会3月定例会の開会にあたり、令和7年度の町政運営につきまして所信の一端を申し上げ、町民の皆様並びに議員各位のご理解とご協力を賜りたいと存じます。
予算の概要
国の地方財政対策では、社会保障関係費、人件費の増加や物価高が見込まれる中、地方公共団体が、住民のニーズに的確に応えつつ、様々な行政課題に対応し、行政サービスを安定的に提供できるよう、一般財源総額について、令和6年度を上回る額を確保する対応が図られております。また、地方財政の健全化を進める観点から、臨時財政対策債は、制度創設以来、初めて発行額がゼロとなったところです。
一方で、現下の物価高、賃金や調達価格の上昇に対応しつつ、デフレを脱却し、新たなステージとなる「賃上げと投資が牽引する成長型経済」への移行を実現することを目指して、物価上昇を上回る賃金上昇の普及・定着、地方創生2.0の起動、官民連携による投資の拡大、防災・減災及び国土強靱化の強化、充実した少子化・こども政策の着実な実施など、重要課題への対応が求められております。
本町の財政状況につきましては、引き続き、国策と連動し、物価高の影響を受ける生活者や事業者の負担軽減に向けた支援のほか、多世代交流型の子育て支援・健康推進に向け、デジタルツールを活用しつつ、ソフト事業と施設改修の両面から進める取組、地域内における森林資源の持続的な循環に向けた一層の取組など、緊急性や重要性の高い案件に対応しながら、財政指標等の一定の水準を確保した上で、これまで財政調整基金をはじめとする基金への積立を行い、弾力的な財政運営を進めてまいりました。一方で、義務的な経費が増加傾向にあるとともに、今後、ふるさと森林公園再整備等の主要事業への財政支出も見込まれることから、より一層、計画的かつ柔軟な財政運営を行っていく必要があると認識しております。
令和7年度は、人と人との「つながり」が生み出す共創のまちづくりの理念の下、スタート年である「第6次白鷹町総合計画後期基本計画」に掲げる町の将来像の実現を目指し、「人への投資」をはじめとした持続可能な人口対策等の主要施策や、各分野におけるDX・GXへの対応、新たな雇用の場の創出に向けた取組、インフラ老朽化の対応を含む防災・減災の強化など、活力ある多様な地域社会を実現し、未来に「つながる」施策を展開していく観点から予算を編成しました。
この結果、一般会計当初予算額は99億4,000万円となり、前年度に対し6億7,000万円、7.2%の増となったものであります。
さらに、令和6年度補正予算におきまして、国の補正予算などに対応した事業を前倒しで計上し、明許繰越も視野に入れて進めていることから、令和7年度は、これらと当初予算とを合わせて、実質的に100億9,000万円規模の予算となるものであります。
次に、予算の歳入・歳出について申し上げます。
はじめに、歳入の状況でありますが、一般財源につきまして、町税は11億7,984万円で、都市計画税の課税停止による減収はあるものの、個人町民税の定額減税終了により3.0%の増となっております。地方交付税40億1,200万円のうち普通交付税は、人件費の増加や物価高への対応に伴う算定額の増額等を見込み、0.8%増の35億8,200万円、特別交付税は、新たに実施する地方創生交付金事業に伴う増等を見込み、4.9%増の4億3,000万円を見込んでおります。この他、繰入金は財政調整基金や減債基金からの繰入の増により15.8%増の4億4,592万8千円、町債につきましては、臨時財政対策債が皆減となったものの、31.8%の増で13億5,090万円となっております。
次に、歳出につきましては、性質別に見ますと、人件費は2.8%増の13億5,398万1千円、扶助費は5.8%増の12億9,235万4千円、公債費は8.2%減の12億5,040万9千円となり、義務的経費全体では0.1%の減となっております。一方で、普通建設事業費は、28.8%増の13億6,496万7千円、物件費は17.7%増の16億1,968万7千円となっております。
特別会計及び企業会計につきましては、全体で70億7,314万6千円を計上し、前年度より8億985万4千円、12.9%の増となったものです。
以上、一般会計に特別会計等を合わせた当初予算総額は、170億1,314万6千円、9.5%の増となったものです。
施策の概要
次に、具体的な施策につきまして申し上げます。
第6次総合計画後期基本計画の下、新たな一歩を踏み出す令和7年度は、前期基本計画の評価・検証を踏まえつつ、町の将来像の実現に向け、重点4分野である「人づくり」「産業・経済」「地域力」「定住化」を施策の柱として引き続き着実に進め、持続可能なまちを目指してまいります。
特に、重点プロジェクトとして掲げる「持続可能な人口対策」として、多様な人材確保に向けて新たな人の流れを形成する取組や、子育て及び若者世帯の希望を叶える環境の整備や支援、魅力的な地域づくりへの支援など、これまで実施してきた対策を更に前に進めていくとともに、「くらし」や「しごと」の面からの支援やPRに取り組むことで転入促進・転出抑制を図りつつ、女性や子育て世代、若者に選ばれるまちづくりを進めてまいります。
行政のデジタル化
デジタル技術の活用により、町民の皆様の利便性向上を図るとともに、業務を効率化することで住民サービスの更なる充実を図るため、引き続き、行政のデジタル化を推進してまいります。
令和7年度におきましては、町公式SNSと連携した公共施設予約システムや図書館システムの構築などにより住民サービスの向上を図るほか、自治体DXを担う人材の育成に向けて各種研修に取り組むとともに、引き続き電算処理システムの標準化・共通化を進めてまいります。
シームレスなまちづくり
第6次総合計画後期基本計画では、これまでのコンパクト・プラス・ネットワークの考え方に加え、交通等の物理的なネットワークだけでなく、デジタルネットワークも活用しながら時間や場所の制約を克服するシームレスなまちづくりを目指しております。
人口減少社会において、今後、ますます重要な役割を担う町立病院及び健康福祉センターを核とした、第2期健康と福祉の里構想の推進や、県都山形市と本町を繋ぐ重要な路線である国道348号の再整備に向けた取組、デマンド交通の町外延伸便の運行等を継続するとともに、行政手続きのデジタル化等により利便性の向上や負担感の軽減に取り組んでまいります。
(1)施策の柱「人づくり」
1.子育てしやすい環境づくり
出生数の減少が続く厳しい状況ではありますが、「こども家庭センター」を中心に関係機関との協力をより一層進め、デジタル技術も活用しながら、引き続き子育て世代の方々が安心して出産、子育てができる相談支援に取り組んでまいります。
また、保育料無償化や出生祝金の交付を継続するとともに、新たに、言語の理解能力や社会性が高まる5歳児を対象に健康診査を実施し、発達障がいなどの特性の早期発見と適切な支援につなげてまいります。
2.教育の充実
デジタル化やグローバル化といった社会的変化が急速に進む時代において、社会を生き抜く力を育み、子どもたちの可能性を広げる取組が求められております。
学校教育につきましては、新しい時代に即した質の高い教育の実現に向け、ICT支援員の配置による授業支援や教職員向けの活用研修等を深化するとともに、小中学校の一人一台端末の更新及び白鷹中学校への電子黒板の導入などにより、ICTを活用した個別最適かつ創造性を育む学びの充実を図ります。
また、学校環境の改善に向け、各小学校のトイレの洋式化を実施するとともに、スクールバスの更新や白鷹中学校グラウンドの排水対策により安全な教育環境の構築に取り組みます。
そのほか、おいしく安全安心な学校給食の提供に向け、地元食材の積極的な活用に努めながら、味や品質を確保してまいります。
3.地域の担い手の育成
人口減少等により、地域を取り巻く環境は大きく変化しております。
各産業分野における担い手不足に対応するため、まちの仕事を組み合わせたマルチワークを提供することで移住希望者の受け皿となる地域人材ベースキャンプの運営を引き続き支援してまいります。
荒砥高等学校支援関連は、生徒数の確保を最重要課題として捉え、魅力化計画を基に、小規模校の特色を生かした生徒一人一人の学力に応じたきめ細かな学習指導や基礎学力の向上に取り組むほか、オンライン教育コンテンツの活用に対する支援などを継続して実施してまいります。
生涯学習、芸術文化面では、生涯学習振興計画に基づき、町民ニーズに沿った多様な学習機会の創出を図るため、引き続き、町民自らが企画し実施する自発的な生涯学習活動への支援を行うほか、利便性の向上と地域づくり活動の活性化を図るため、山峡の里交流広場の改修を行います。
スポーツの推進につきましては、若鮎マラソン大会をはじめとした各種イベントを継続実施するほか、町営スキー場の利用者が安心してスキーを楽しむことが出来るよう、ペアリフトの改修を行います。
(2)施策の柱「産業・経済」
1.農業の振興
気候変動による食料生産の不安定化や持続可能な環境への配慮など農業を取り巻く情勢が急速に変化する中、地域の特色をいかしつつ情勢の変化に対応した魅力ある産地の形成に向け、計画的なブロックローテーションの取組なども含め、需要に応じた生産を関係機関と連携し進めてまいります。
併せて、農地の将来像となる地域計画の実現に向け、基盤整備や農地の集積・集約による作業の効率化と農地利用の最適化を図るとともに、日本型直接支払交付金事業の取組を通し、集落機能及び農村環境の維持・向上と、農村地域の振興につなげてまいります。
また、農業従事者が減少する中、多様な担い手の確保や雇用就農への支援を継続するほか、本町の農産物や資源を活用した新たな価値やビジネスの創出による農業所得の向上に向け、6次産業化の拠点となる施設整備を進めてまいります。
2.林業の成長産業化
本町の森林の多くは本格的な利用期を迎えており、「白鷹町森林(もり)とつながる暮らしビジョン」に基づき、伐って、使って、植え、そして育てる「緑の循環システム」の構築に向け、航空レーザ測量によるデジタルデータを活用した筆界想定図により、効率的な森林境界明確化、森林資源の把握等を進めてまいります。
また、森林資源の活用と森林林業の再生に向けて、機械化、省力化等による森林施業の低コスト化を推進するため、路網の整備に取り組んでまいります。
有害鳥獣対策につきましては、被害の軽減に向け、地域及び関係機関との緊密な連携を図り、被害軽減に向けた取組を支援するとともに、町単独による有害鳥獣処理施設整備に向けた検討を継続してまいります。
3.地域産業の振興
本町の経済状況は、原材料や燃料費、電気料金などの物価高騰の継続により、企業は厳しい経営環境におかれているものと認識しております。引き続き、経済動向を注視し、必要な支援策に取り組んでまいります。
商工業振興につきましては、企業立地及び設備投資に伴う雇用の創出に向け、新産業団地造成にかかる整備基本計画の策定に取り組んでまいります。
また、人材確保に向けては、新規学卒者の町内企業への就職促進を図るため、新たに、採用者に対する自動車運転免許費用助成を行う事業者への支援を行うとともに、人材育成に向けては、事業者が行う従業員向け研修費用等への支援により、リスキリングを通じた労働生産性の向上に繋がる取組を促進してまいります。
観光振興につきましては、新たな観光交流推進計画に基づき各種事業に取り組むとともに、白鷹町観光協会や関係団体、近隣市町などとの連携により、地域の魅力を発信し誘客拡大に取り組んでまいります。
また、ふるさと森林公園につきましては、施設の再整備に引き続き取り組むとともに、新たにふるさと森林公園をハブ(中核)とし、地域の観光資源が連動した「地域循環型ウェルネスツーリズム」の推進を図り、持続可能な観光事業の確立に取り組みます。
さらに、「日本の紅(あか)をつくる町」として、紅花の安定した生産に向け、課題である「連作障害」や「後継者不足」への対応に取り組み、生産量日本一の継続と、紅花文化の伝承や、魅力ある観光資源として発信することで、地域活性化につなげてまいります。
(3)施策の柱「地域力」
1.安心して暮らせるまちづくり
近年、自然災害が激甚化・頻発化する中で、消防団は地域防災の要であり、地域の期待も大きいことから、地域づくり推進交付金に「地域防災対応分」を新設し、団を支える地域の負担軽減と消防団体制の強化・地域防災力の向上を図ってまいります。
また、水防倉庫の移転新築や有蓋貯水槽、消火栓整備など、引き続き防災インフラの充実を推進してまいります。
2.特性を生かしたそれぞれの地域づくり
各地区では、地域の拠点であるコミュニティセンターを中心に、特色を生かした地域づくりが行われております。町民が主役の地域づくりに向けて、これまで以上に創意工夫が発揮されるよう、新たな体制による運営をスタートするとともに、交付金等による支援や、分館整備への支援を行ってまいります。
また、集落支援員を増員し、集落の維持・活性化に向けた支援を行うとともに、地域おこし協力隊においては、隊員の増員と活動の定着を図ってまいります。
3.持続可能な循環資源の利用
環境施策につきましては、第3次白鷹町環境基本計画等に基づき、町民・事業所・町が一丸となり、自然環境との共生による持続可能なまちづくりに取り組んでまいります。具体的には、再生可能エネルギー設備導入に対する助成や、断熱性能等が高い住宅新築への支援を継続実施してまいります。
また、ごみの減量化や再資源化、再利用化に対し当事者意識を持って取り組んでいただけるよう、環境保全活動や環境情報の提供などに携わる団体等と連携を図り、持続可能で循環型の美しいまちを目指して継続して普及啓発に努めてまいります。
4.定住条件の充実
道路交通網の整備につきましては、引き続き国道348号の高規格化による再整備に向けて取り組むとともに、県が管理する道路交通網の整備促進や早期着工についても、事業推進に向けて要望活動に取り組んでまいります。
町道維持・新設改良関連では、除雪機械の整備や除雪担い手の育成・確保、災害の未然防止を図るための測量設計、危険な形状の交差点等の改良工事に引き続き取り組み、地域の安全確保と町民生活の安定に努めてまいります。
河川・水路維持関連では、準用河川6河川の維持管理を行うなど、豪雨等による被害の未然防止や低減に努めてまいります。
水道事業につきましては、安全・安心で良質な水道水の安定供給のため、施設の長寿命化や規模の適正化、管路の耐震化を図るとともに、計画的かつ効率的な整備及び維持管理を推進してまいります。
下水道事業につきましては、引き続き、管渠や合併処理浄化槽整備を実施するとともに、ストックマネジメント計画の策定や経営戦略の改定に取り組み、持続的な下水道機能の確保と維持管理費の削減に努め、経営の健全化を推進してまいります。
5.保健・医療・福祉の充実
高齢者福祉・介護保険事業につきましては、地域包括支援センターの運営に関して、白鷹町社会福祉協議会との連携をより深めていくことで、高齢者の総合相談支援を軸にしつつ、地域での支え合いの仕組みづくりや認知症予防・重度化防止に向けた取組などを一体的に推進するとともに、分野を横断した重層的な支援体制の構築を進めてまいります。また、介護人材確保に取り組む事業所の支援により、介護サービス提供基盤の確保を図るとともに、利用者の移動支援や、難聴を原因とするフレイルの予防に引き続き取り組んでまいります。
障がい者福祉につきましては、障がいのある方の日常生活におけるニーズを把握し、社会の中にあるさまざまなバリアを取り除く取組をすすめ、障がいの有無に関わらず、個性をいかし、ともに支え合う「地域共生社会」を目指してまいります。
健康づくり事業につきましては、推定食塩摂取量検査を後期高齢者の方にも拡大し、高血圧をはじめとした生活習慣病予防を推進してまいります。また、白鷹町立病院での人間ドックの際に特定保健指導を実施し、早期に生活習慣病予防に取り組むことが出来る体制を整備してまいります。
さらには、子育て支援も含めたこれらの取組を一体的かつ効率的に進めていくため、健康福祉センターの改修を進めるとともに、デジタル技術を組み合わせながら、全町民が生きがいを持って活躍できる環境整備に取り組んでまいります。
町立病院につきましては、身近な医療資源が限られる中、なくてはならない町唯一の病院として医療の中核を担い、町民の皆様が安心して暮らせるよう安定的な地域医療の提供に努めてまいります。
また、第2期健康と福祉の里構想に基づく病院再整備に着手し、末永く地域医療を守る砦として、持続可能な運営を目指す白鷹町立病院経営強化プランの実施とともにソフト・ハード両面から医療環境の充実に取り組みます。
(4)施策の柱「定住化」
1.良好な住環境の確保
住宅施策では、定住促進・転出抑制対策として、子育て・若者世帯の住環境の整備やその取得等に対する支援を継続して行ってまいります。
空き家対策につきましては、地域の方々のご協力をいただきながら、現地調査による空き家の実態把握に務めるとともに、所有者等への適正管理の働きかけや、危険空き家等解体に対する助成の拡充を行うなど、総合的に取り組んでまいります。
2.新たな人の流れの形成
本町への新しい人の流れをつくるため、総合的な相談窓口を設置し、充実した移住支援策や、保育料完全無償化をはじめとした手厚い子育て支援施策の積極的なPRを行うことでUIJターンによる移住者の確保に継続して取り組みます。
また、関係人口の拡大に向けた広域連携による取組を進めるとともに、地域経済の担い手として定着しつつある外国人材の受入体制の整備など暮らしやすい環境整備に引き続き取り組んでまいります。
加えて、首都圏白鷹会等への継続した支援のほか、紅花友好都市協定を締結した埼玉県桶川市をはじめ、災害相互応援協定を締結しているなど縁のある自治体との交流を推進してまいります。
(5)行財政改革の推進
第6次白鷹町総合計画後期基本計画に掲げる施策を実現するため、地域活力の再生・創造や民間活力の活用を推進するほか、庁内においても、デジタル活用による業務効率化やBPR(業務改革)の取組に重点を置き、それを担う職員自らが主体的に推進していくことのできる組織づくり、人づくりを進めてまいります。
以上、令和7年度の施政方針を申し上げましたが、本町のさらなる発展と住民福祉の向上に向け、全力を傾注してまいる所存ですので、町民の皆様並びに議員各位には、より一層のご指導、ご協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。